東京地方裁判所 昭和36年(レ)644号 判決 1963年10月30日
控訴人 高水健次郎
被控訴人 高嶋花枝 外三名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人等は控訴人に対し、別紙目録<省略>(ロ)記載の建物を収去して同目録(イ)記載の土地を、同目録(ニ)記載の建物を収去して同目録(ハ)記載の土地をそれぞれ明渡せ。被控訴人高嶋花枝は年四九八円の割合による金員を、同高嶋初枝、同高嶋一之および同高嶋梢はそれぞれ年三三二円の割合による金員を昭和三五年四月四日以降右明渡済みまで控訴人に対して支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」との判決および仮執行の宣言を求め、被控訴人等代理人は主文と同旨の判決を求めた。
控訴代理人は請求の原因として次のとおり述べた。
「別紙目録(イ)および(ハ)記載の各土地(以下本件各土地という)はもと訴外乙訓亀吉の所有であつたが、控訴人は昭和三四年一一月一九日右訴外人からこれを買受け、同日これについて所有権移転登記手続をなした。しかるに、被控訴人等は昭和三五年四月四日以降、前記目録(イ)記載の土地の上に同目録(ロ)記載の建物を、又同目録(ハ)記載の土地の上に同目録(ニ)記載の建物をそれぞれ所有(共有)して本件各土地を占有し、故意又は過失により控訴人の所有権を侵害し、控訴人に対し地代相当額である年一、五〇〇円の割合による損害を与えている。そして、被控訴人等の前記目録(ロ)および(ニ)記載の各建物(以下本件各建物という)の共有持分は、いずれも、被控訴人高嶋花枝が九分の三、その他の被控訴人等が各九分の二であるから、控訴人は被控訴人等に対し、本件各建物を収去して本件各土地を明渡すことを求めるとともに、昭和三五年四月四日以降右明渡に至るまで、年一、五〇〇円の割合による損害金を被控訴人等の前記持分に応じて支払うことを求める。」
控訴代理人は被控訴人等の抗弁に対し、「第一項の事実はすべて知らない。第二項中、被控訴人等の先代高嶋正雄(以下先代正雄という。)が昭和三三年三月二日死亡し、被控訴人等が共同相続し、先代正雄の地位を承継したことは認める。その余の主張は争う。第三項および第四項の主張はすべて争う。」と答え、「かりに、被控訴人等主張のとおり、先代正雄が本件各土地について賃借権を有し、被控訴人等がこれを共同相続したとしても、控訴人が訴外乙訓亀吉から本件各土地の所有権を取得し、その旨の登記を経た当時、本件各土地の上に存する本件各建物は登記簿上訴外高水一の所有名義となつていて、被控訴人等は借地上に登記した建物を有していなかつたので、被控訴人等は右賃借権を控訴人に対抗することができない。たとえ、被控訴人等主張のとおり、訴外高水一が本件各建物を担保のため取得したとしても被控訴人等が右賃借権を控訴人に対抗できないことに変りはない。従つて、被控訴人等は何らの権原なくして本件各土地を占有しているものである。」と主張した。
控訴代理人は再抗弁として、「かりに、先代正雄が、訴外乙訓亀吉から本件各土地を賃借したとしても、先代正雄は昭和二七年一二月一六日訴外高水一に対し、本件各建物を譲渡するとともに本件各土地の賃借権をも譲渡し、右訴外人は右賃借権を譲受けると同時に控訴人に対し、これを放棄する旨の意思表示をしたのであるから、被控訴人等が右賃借権を承継取得するに由ないものである。たとえ、先代正雄の本件各建物の譲渡が担保のためになされたものであつたとしても、右譲渡により本件各建物の所有権は内外とも右訴外人に移転したものと解すべきであるから、右の理に変りはない。又、かりに、本件賃借権が訴外高水一に譲渡されず先代正雄が依然としてこれを有していたとしても、これを承継取得した被控訴人等は昭和三四年六月下旬頃当時賃貸人であつた訴外乙訓亀吉に対し、右賃借権を放棄する旨の意思表示をした。」と述べた。
証拠<省略>
被控訴人等代理人は控訴人の請求原因に対し、「本件各土地がもと訴外乙訓亀吉の所有であつて、控訴人がその主張の日に右訴外人からこれを買受け、その主張のような登記手続をしたこと、および、被控訴人等が昭和三五年四月四日以降本件各土地の上に本件各建物を所有し、本件各土地を占有していることは認める。本件各土地の地代相当額が年一、五〇〇円であることは否認する。」と述べ、抗弁として次のとおり述べた。
「一、先代正雄は昭和一九年頃本件各土地を当時の所有者から建物所有の目的で賃借し、別紙目録(イ)記載の土地の上に存する同目録(ロ)記載の建物を所有者訴外内倉倉三郎から買受け、右建物について同年三月三〇日所有権移転登記手続をし、又、同目録(ハ)記載の土地の上には同目録(ニ)記載の建物を建築し、同年八月二五日右建物について所有権保存登記手続をした。その後先代正雄は訴外高水一に対し、六〇、〇〇〇円の消費貸借上の債務を負担するに至り、昭和二七年一二月一六日、右債務の担保のために、本件各建物について、その所有権は内部的に留保したまま、登記簿上右訴外人の所有名義に移転登記手続をした。
二、先代正雄は昭和三三年三月二日死亡し、相続人である被控訴人等は共同相続によつて本件各土地の賃借権を承継取得した。
被控訴人等は以下の理由により右賃借権を控訴人に対抗し得るものである。すなわち、建物の登記は賃借権の対抗力の発生要件であつて、存続要件ではないから、先代正雄が本件各土地を建物所有の目的で賃借し、その上に本件各建物を所有し、前述のとおりこれらの建物について同人の所有名義の登記手続をした以上これにより右賃借権は対抗力を具備したのであり、この対抗力は、その後本件各建物が登記簿上訴外高水一の所有名義に移転したことによつても消滅していない。かりにそうでないとしても、先代正雄は訴外高水一に対し、本件各建物を譲渡担保に供し、同訴外人名義の登記がなされているから、先代正雄は右訴外人の右登記により本件各土地の賃借権を公示していたものであつて、建物保護ニ関スル法律第一条第一項の要件を具備するものである。
三、かりに右主張が理由ないとしても、控訴人は被控訴人等が本件各土地について賃借権を有することを知りながら本件各土地を買受けたものであるから、被控訴人等の有する右賃借権の対抗力の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者ではない。
四、かりに以上の主張が認められないとしても、控訴人の本訴請求は権利の濫用であつて許されない。すなわち控訴人は浅草に居住し、多数の職人を使用して鞄の製造販売を営んでいるから、本件各土地は控訴人の生活のためにも又営業のためにも必要でない。しかも控訴人は被控訴人等が賃借権を有することを知りながら本件各土地を買受けたのである。他方、被控訴人等は本件建物に居住し、飲食店を経営しており、本件各建物を収去して本件各土地を明渡すと、右飲食店の経営を継続することが不可能となり、他に財産を有しない被控訴人等は生計の途を失うことになる。このような当事者双方の事情を考え合せると、控訴人の本訴請求は権利の濫用であるといわなければならない。」
被控訴人等代理人は控訴人の再抗弁に対し、「先代正雄が本件各土地の賃借権を訴外高水一に譲渡したこと、右訴外人が控訴人に対し右賃借権を放棄する旨の意思表示をしたこと、および、被控訴人等が訴外乙訓亀吉に対し、右賃借権を放棄する旨の意思表示をしたことは否認する。」と述べた。
証拠<省略>
理由
本件各土地がもと訴外乙訓亀吉の所有であつて、控訴人が昭和三四年一一月一九日これを買受けて同日所有権移転登記を経たことおよび被控訴人等が昭和三五年四月四日以降本件各土地の上に本件各建物を所有し、本件各土地を占有していることは当事者間に争がない。
そこで被控訴人等の賃借権の抗弁について判断するに、成立に争のない甲第一、二号証および乙第一号証の一、二、原審および当審における証人乙訓亀吉の証言、ならびに同被控訴人高嶋花枝本人尋問の結果を総合すると、先代正雄は昭和一九年頃本件各土地を当時の所有者である訴外乙訓亀吉の父から建物所有の目的で賃借したこと、先代正雄は同年三月三〇日別紙目録(イ)記載の土地の上に存する同目録(ロ)記載の建物を所有者訴外内倉倉三郎から買受けて、同日右建物について所有権移転登記手続をし、同目録(ハ)記載の土地の上には同目録(ニ)記載の建物を建築し、同年八月二五日右建物につき所有権保存登記手続をしたことおよび訴外乙訓亀吉は昭和二九年一一月一九日相続により本件各土地の所有権を取得するとともに、先代正雄に対する賃貸人としての地位を承継したことが認められ、右認定に反する証拠はない。
次に、成立に争のない乙第一号証の一、二、同第二号証、当審証人高水一の証言により成立の認められる同第三号証、原審および当審における証人高水一の証言、および同被控訴人高嶋花枝本人尋問の結果によれば、先代正雄は訴外高水一との間に、昭和二七年一二月一六日、右訴外人に対して従来負担していた債務合計六〇、〇〇〇円をもつて準消費貸借とし、その弁済期を昭和二八年一月末日、利息を月三分と定め、これを担保するために、本件各建物の所有権を右訴外人に譲渡し、昭和二七年一二月一六日右訴外人の所有名義に移転登記手続をしたこと、先代正雄は弁済期後も右訴外人に対し利息を支払い、右弁済期は順次延期され、昭和三三年三月先代正雄の死亡後は、被控訴人等がその権利義務を承継し、同様に利息を支払い、弁済期の延期を得ていたが、昭和三五年三月一六日右債務の残元本、利息その他を支払つて、本件各建物の所有権の返還を受け、同年四月四日被控訴人等の所有名義に登記手続をしたことが認められ、(なお、先代正雄が昭和三三年三月死亡し、被控訴人等がその地位を承継したこと、および本件各建物につき昭和三五年四月四日被控訴人等の所有名義に登記手続がなされたことは当事者間に争がない)以上の認定を左右するに足る証拠はない。
そこで、右のように、本件各建物の所有権が譲渡担保として訴外高水一に移転した場合に、その敷地である本件各土地の賃借権もまた右訴外人に移転したかについて判断する。建物の敷地の賃借権はその建物と合して一つの財産的価値を形成しているものであるから建物の譲渡があつた場合、敷地の賃借権もまた原則として譲渡されることは当然であるが(経済的運命共同性)、借地上の建物が譲渡担保とされ、しかも賃借人たる債務者が従前と変りなく建物を使用し、その建物について別段債権者との間に貸借の契約をせず、また、地代も債務者において地主に支払つているような場合は、敷地賃借権は建物が担保として債権者の所有に属する限り、直ちに建物の所有権とともに債権者に移転することなく、依然として債務者のもとに存しているものと認めるのが、譲渡担保の法律関係の規律として相当である。けだし、譲渡担保の目的からして債務者は債権者に対して敷地賃借権を譲渡する必要もなく、又、土地の使用収益関係に変動がないのであるから、地主に対して民法第六一二条第二項の権利の行使を許容するのは相当でないからであり、前述した建物と敷地賃借権の経済的運命共同性は債権者が譲渡担保たる建物を他に譲渡したとき、又は、債権の弁済として確定的に所有権を取得したときに初めて実現すると解すれば足りるからである。本件において、原審および当審における証人高水一の証言および同じく被控訴人高嶋花枝本人尋問の結果によれば、本件譲渡担保設定当時、先代正雄と訴外高水一との間に、敷地賃借権の譲渡につき何の話合もなく、従つて建物使用について明確な契約もなかつたこと、又先代正雄および右訴外人は当時の地主である訴外乙訓亀吉に対して土地の使用関係について何の話もしなかつたこと、先代正雄(同人の死亡後は被控訴人等)は本件各建物および本件各土地の使用を従前どおり継続し、地主に対して地代を払つていたこと、がそれぞれ認められ(以上の認定に反する証拠はない)、これらの事実によれば、上述のとおり、本件各土地の賃借権は依然先代正雄のもとに存していたものと認めるのが相当である。
控訴人は訴外高水一が本件各土地の賃借権を譲り受けた後これを放棄した旨主張するが、右訴外人が賃借権を譲り受けなかつたことは前示認定のとおりであるから、控訴人のこの主張は失当である。
以上の認定によれば、被控訴人等は本件各土地の賃借権を先代正雄から相続により承継取得したことが明らかであるが、控訴人はこれに対し被控訴人等が昭和三四年六月下旬頃賃貸人である訴外乙訓亀吉に対し、右賃借権を放棄する旨の意思表示をした旨主張する。しかしこれに副う原審および当審における証人乙訓亀吉の証言は原審証人森下角太郎、同秋山弥七、および当審証人高水一の各証言、ならびに原審および当審における被控訴人高嶋花枝本人尋問の結果に照し、たやすく信用することができず、他に控訴人の右主張を認めるに足りる証拠はない。
次に、控訴人が本件各土地を譲り受けた当時、地上の本件各建物は譲渡担保として訴外高水一名義で登記されていたことは右に認定したとおりである。そこで、先代正雄ないし被控訴人等が右訴外人名義の登記ある建物の存在をもつて前示賃借権を控訴人に対抗できるかどうかが問題となるが、当裁判所は以下に述べる理由によりこれを肯定すべきものと判断する。
建物保護ニ関スル法律第一条第一項が、地上建物について登記があることをもつて借地権者が第三者に借地権を対抗し得るものと定めた所以は、土地所有者すなわち賃貸人又は地上権設定者の協力なくして借地権者のみでなし得る地上建物の登記をもつて借地権の登記に代えることにより、借地人の借地権対抗力の取得を容易にし、借地権の強化を計る一方、借地権に右のような外部的表象を与えることにより、土地について取引関係に立とうとする第三者の利益を保護しようとすることにあることはいうまでもない。
ところで、地上建物の登記自体は建物の存在およびその所有者が何人かを公示するものであつて、借地権の存在および借地権者が何人かを直接公示するものといえないのみならず、土地と建物とが別異の不動産とされ、各別の登記簿に登載されている現行法の下においては、地上建物の登記をもつて借地権の公示方法とすることはとうてい十全のものとはいい難い。従つて、土地について取引関係に立とうとする第三者が借地権の有無および借地権者が何人かを確知しようとすれば、単に建物の登記を調査するだけでは足りず、予め現地に臨み、その法的又は社会経済的状態を調査することを要するものであり、又、今日の宅地取引は現地の調査を必須の前提とするのが実情である。
してみれば、前記法条は借地権保護のために、土地について取引関係に立とうとする第三者に対してその利益を多少犠牲にすることを要求するものではあるが、もとより、第三者に犠牲を要求する程度如何は、借地権保護という社会経済的目的が現下の私法秩序において占める重要性と比較衡量して決定されなければならないことはいうまでもない。そして、前記法条が借地権者が借地権を対抗するためには自らの登記名義ある建物を有しなければならないよう立言する趣旨は、右をもつて前示利益の衡量を計ろうとするものであると解される。
しかし、地上建物の登記名義が借地権者自らのものでなくても、借地権者と登記名義人との間に特別の法的ないしこれに準ずる関係があり、第三者にこの関係を承認させることができる場合において、前示宅地取引の実情をも考慮したうえで、借地権の保護の必要とこれにより第三者が受ける不利益とを比較衡量し、借地権者以外の者の登記名義ある建物の存在をもつてもなお借地権を対抗し得るものと解することが相当であり、かつ、かく解することが前説示の前記法条の趣旨を不当に逸脱しないと考えられる場合には、借地権者と建物の登記名義人の乖離にかゝわらず、前記法条はなお適用があるものと解すべきである。
その具体的な場合として、たとえば土地全部の適法な転借人の名義の建物が存する場合が考えられる。この場合、賃借人(転貸人)は自らの名義の地上建物を取得する余地がないのであるが、その賃借権を第三者に対抗しうる必要は存するのである(このことは賃借人の転借人に対する義務を考えれば明らかである)。そして当該土地について適法な転貸借関係があることは、右第三者も承認せざるを得ないものである。そうだとすれば、賃借人は転借人名義の建物の存在をもつて、その賃借権を対抗し得るものと解するほかないわけであるが、かく解したからといつて、第三者が負担すべき犠牲が前記法条の予定するところより特に著しいものとは解し難く、従つて、前記法条の趣旨を逸脱するものとは考えられないのである。
そこで、本件のように土地の賃借人が地上建物を譲渡担保に供した場合を考察する。既に説示したとおり、地上建物が譲渡担保に供された場合にも、建物の敷地賃借権は特別の事由がない限り依然として譲渡担保設定者、すなわち賃借人のもとに存するのであるから、賃借人はこれを第三者に対抗し得る必要がある。ところで、担保のための所有権移転という登記を認めない現行法の下においては、地上建物を譲渡担保として供した賃借人は、譲渡担保権者のためにこれが対抗要件を具備するため、地上建物につき所有権移転登記をなすほかないから、ここに賃借人と地上建物の所有名義人との乖離を余儀なくされるのである。そこで、この場合賃借権の対抗力を認めようとすれば、譲渡担保権者名義の建物の存在をもつて足りるとするほかないことは、前段所述の賃借人が土地全部を適法に転貸した場合と同様である。
しかし、この場合にはなお賃借人が第三者に対し現在の建物の登記名義人との関係が譲渡担保である旨を主張し得るかを考えなければならない。けだし、譲渡担保において、所有権の移転が担保のためであるということは、譲渡担保の当事者間においていい得るに止り、対外的には完全に所有権の移転があるものとして取扱われるべきものとされるからである。ところで、右の理は譲渡担保の目的物、すなわち本件に即していえば地上建物につき所有権その他の権利を取得した者との関係では当然に妥当するけれども、これが右目的物ではない土地の所有権を取得した者との関係においてもまた等しく妥当するとは直ちに考え難い。そうして、地上建物を譲渡担保に供したがなお賃借権を自己のもとに保有する賃借人の利益を保護する必要と、地上建物の登記が譲渡担保権者の名義となつている土地につき所有権を取得しようとする第三者の利益の保護の必要とを比較衡量するとき、建物保護ニ関スル法律の趣旨は前者を重んずべきものとすると解するのを相当とするので、賃借人は右第三者に対し前示の関係を主張し得るものというべきである。
してみれば、賃借人は譲渡担保権者名義で登記されている地上建物の存在をもつて第三者に賃借権を対抗することができるものというべく、かく解することは右法律第一条第一項の趣旨を逸脱するものではないというべきである。
以上の理由により被控訴人等は本件各建物につき譲渡担保権者である訴外高水一名義の登記あることをもつて控訴人に対し本件各土地の賃借権を対抗できるものである。
よつて、その余の争点について判断を加えるまでもなく、控訴人の本訴請求は理由がないからこれを棄却すべく、これと同趣旨の原判決は結局相当であるから、本件控訴はこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 上野宏 川上泉 青山正明)